旅愁鉄道

旅愁漂う鉄道!国鉄及びJRについて語ります。

JR北海道を再生するには!その3「JR北海道の現状」

現在、JR東日本が新幹線の最高時速360キロ運転を目指す中、整備新幹線の新規開業区間の最高速度は全国新幹線鉄道整備法施行令の第三条の二によって、時速260キロとなっており、青函トンネルにいたっては、時速140キロの超徐行運転となっています。このため、2016年3月26日に北海道新幹線が開業しましたが、函館市民の多くは失望しています。2005年5月に北海道新幹線新青森新函館北斗間)の着工が決まった時、函館市民は開業時、東京~新函館北斗間は、最高時速360キロ運転で3時間10分台で結ばれ、文字通り函館は本州と陸続きとなり、計り知れない経済効果に多大な期待を寄せました。しかし、いざ開業してみると、東京~新函館北斗間の所要時間は最速で4時間2分、最も遅い列車は4時間30分と、3時間台どころか、全列車が4時間の壁を越えられない異常事態となっているのです。さらにとどめとして、JR北海道新函館北斗~函館間の函館ライナーに着席輸送ではなく、立席輸送を基本とするロングシート車をあてたのです。これらの失策に対して、函館市民は、もう開いた口がふさがらないというのが実情です。1982年6月23日、東北新幹線(大宮~盛岡間)が開業した時、あのサービスが悪かった国鉄時代にもかかわらず、国鉄は大宮~上野間に、乗車券のみで乗車できる新幹線リレー号(特急車両で編成された長大14両編成の列車)を1985年3月14日の新幹線上野開業まで走らせたのです。はるかに規模が小さいとはいえ、函館ライナーのロングシート車6両編成というのは、4時間以上もかけて、東京から乗車いただいたお客様に対して、あまりに酷であり、サービス低下もはなはだしいと言えます。現実的に函館ライナーに特急車両をあてるのが無理ならば、即刻リクライニングシートのuシート車を連結すべきです。そうでもしなければ、東京から新幹線で函館に行くお客様は、以上のことで懲りてしまい、リピート率は非常に低くなってしまうと予想できます。それを示すデータとして、2017年度の北海道新幹線運輸収入は79億円と前年度と比較して24%の大幅な減収となっています。平成29年度決算社長談話では、北海道新幹線の開業ブームが落ち着いたなどとのん気なことを言っていますが、勘違いもはなはだしいと言えます。このままでは、北海道新幹線の利用者は減り続けて、JR北海道の更なる経営圧迫要因となる日も近いでしょう。

また、JR北海道では、さきの特急列車不具合・事故の対策の一環として、2013年11月1日のダイヤ改正から、減速運転を実施していますが、それに伴う各都市間の所要増加時分(最速列車で比較)は以下の通りとなっています。札幌~帯広間14分・札幌~釧路間26分・札幌~函館間31分。これは、お客様に対する著しいサービス低下であり、十分に安全対策を構築した上で早急な復帰が必要です。

さらに、JR北海道は経費節減のために、2つの大きな技術開発を断念しています。1つめは、デュアル・モード・ビークルです。これは、鉄道沿線から離れた地域から乗客を集めた後、線路を走行して特急列車の停車駅まで乗客を運ぶという画期的な交通システムであり、日本全国各地の地方鉄道で試験走行を行い、実用化まであともう一歩のところでした。2つめは、キハ285系ハイブリッド振子特急ディーゼルカーです。世界初のハイブリッド車体傾斜装置(傾斜角8度)を採用した次世代高速ディーゼルカーで、2014年9月に試作車が完成しました。この2つの技術開発の断念は、開発費用そのものが灰と帰するだけでなく、社員のモチベーションの大きな低下を招いています。直ちに(公財)鉄道総合技術研究所が引き継いで、開発を続行させるべきです。

ところで、JR北海道の鉄道事業の大幅な赤字は、会社発足当初より当然のごとく予想されていました。昭和60年度の国鉄監査報告書によれば北海道地区は収入が903億円に対して経費は2835億円にも及んでいます。そのため、JR北海道発足に伴い赤字を補填するために経営安定基金6822億円が設けられ、その運用益でその赤字を補うという仕組みが設けられました。しかし、運用益は1987年度498億円だったのが、2017年度255億円と大きく目減りし、鉄道事業の大幅な赤字を経営安定基金の運用益で補うという現JR方式の破綻を招いていると言わざるを得ません。2014年6月12日に設立された外部有識者による「JR北海道再生推進会議」が、2015年6月26日に作成発表した「JR北海道再生のための提言書」の中で、「経営安定基金の運用益の減少など、国鉄改革の当時に想定した前提が大きく変化している中、JR北海道が将来にわたり持続可能な形で安全優先の鉄道事業を行っていくためには、同社は根本的な経営の見直しを行っていく必要がある」とはっきり述べており、この言葉に尽きると言えます。